高校時代より執筆活動を始め、2015年(平成27年)にデビュー作の『君の膵臓を食べたい』で人気作家となった、住野よるさん。
今回はそんな住野さんの作品の魅力や特徴を解説しつつ、デビュー作はもちろん他の作品も紹介していきます。
住野よるの小説の魅力・特徴
住野よるの作品の魅力は清涼感あふれる感情表現の描写の多彩さだと思います。作品の登場人物は主に学生が多く、思春期の学生の繊細な心情を細かく、美しくそして儚く描写している点が多くの人々を魅了するのではないでしょうか。
また登場人物の性格や独自の物語の設定が多彩で読んでいて飽きることがありません。
フィクション小説に必要不可欠の創造性という観点においても、非常に豊かでそのストーリーに引き込まれます。
住野よる おすすめ映像化小説
住野よるさんの小説はどれも人気作品で、発売と同時に多くの方が購入されますが今回はその中でも6つの小説に絞って紹介していきます。
それではまず特に人気小説とも言える映像化した2つをあげていきます。
『君の膵臓を食べたい』(2015年)
あらすじ
ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。その本のタイトルは「共病文庫」と書かれ、内容は日記帳になっていて作者が膵臓の病を患っており、余命がもうあまりないことが綴られていた。慌てて本を閉じるとそこにはクラスメイトの山内咲良がいて、「共病文庫」は彼女の持ち物だと告げられる。彼女の秘密を知ってしまった僕は彼女のお願いを断りきれず、振り回されてしまう。余命わずかとわかっていながらも、それを感じさせずに過ごす咲良に惹かれていく僕。読み終わった後、あなたはきっとこの作品のタイトルに涙せずにはいられなくなる。数々の賞を受賞し、映画化もされた王道系の純愛青春小説。
おすすめポイント
・2016年本屋大賞2位受賞作品
・2020年8月時点で累計発行部数300万部突破
・映画化・漫画化された作品
住野よる作品の中では不動の人気の小説です。
理由としてはいくつかあるのですが、まずこの作品自体がデビュー作であることです。いきなりのデビュー作で映画化や本屋大賞をしてしまうなんて凄すぎますよね。
この作品をきっかけに青春小説の王道系のジャンルである「ヒロイン(主人公)の余命が僅かであることや重病である設定」の作品が多く生まれるようになったといっても過言ではないのでしょうか。
また、この作品のタイトルにも注目が集まったからといえます。一見ホラー要素がありそうなタイトルであるにも関わらず、読み進めていくと判明していく意味。そして、読み終わった後にもう一度表紙を見ると、理解して驚愕し脱帽するような感覚に陥りました。きっと、私のような体験をした人がたくさんいると思います。
こんな時・こんな人におすすめ
・住野よる作品をまだ読んだことがない人
・映画や他のメディアなどは見たことがあるが原作を読んだことがない人
・青春小説を初めて読む人
『青くて痛くて脆い』(2018年)
あらすじ
大学1年生になって2週目の月曜日。僕(田端楓)は秋好寿乃に出会う。彼女は周りから敬遠されていた。なぜなら、大学の講義中に子供じみた理想論を疑いもなく発表していたからだ。「人に不用意に近づかないこと」「誰かの意見に反する意見をできるだけ口にしないこと」この2つを信条とする僕にとって理想を痛くも青臭く追求し続ける彼女は自分とは異なる存在と思えたがなぜか彼女を受け入れてしまう。彼女の理想と情熱に感化され僕は彼女と「モアイ」という秘密結社を作った。それから3年後、僕は秋好と一緒に作ったモアイを崩壊させることに心血を注いでいる。傷つくことの痛みと青春の残酷さを描いた作品。
おすすめポイント
・2020年に映画化された作品
・2020年時点で累計発行部数50万部突破
・青春時代の葛藤や痛みに重きを置いた作品
正直にいうと大学時代を懐かしく思うと同時に秋好のように自分の理想を貫けるタイプの人は羨ましいと感じながら、読みました。恐らく、私自身も主人公の楓と似たようなところがあるからなのかもしれません。
内容は序盤はなかなか理解が難しく、読み進めるのが少し退屈になりかけましたが後半以降展開が変わっていくにつれて、感情移入してしまいました。
大学生という、子供でもなくかと言って大人でもないような中途半端な時だからこそ、感じられる痛みや青臭さなどがあって、正にタイトルの通りだと思いました。
こんな時・こんな人におすすめ
・大学生にこれからなる人、今大学生の人
・映画を見た人で原作を読んでない人
・傷つくのが億劫な時や誰かに傷つけられたまたは誰かを傷つけてしまった時
住野よる おすすめ小説4選
人気小説のうち、私が特におすすめする作品や最新作など4選を紹介していきます。
SF要素がある作品や、ちょっと甘酸っぱくも爽やかな作品、そしてなんとも言えない不思議な体験ができる作品など、どの作品も物語の設定や描写が秀逸で気づいたらのめり込んでしまうこと間違いなしです。
『この気持ちもいつか忘れる』(2020年)
あらすじ
自分自身の人生がつまらない物だと考えていた鈴木香弥(カヤ)は使われなくなったとあるバス停で異世界の少女チカと出会う。チカと話していくうちにカヤはチカに対して恋心が芽生えていることに気づくが、ある日チカから聞いた一言をきっかけに感情的になってしまい、チカとバス停で会えなくなってしまう。住野よるが描く、初の恋愛長篇。
おすすめポイント
・小説×音楽の境界線を超える新感覚コラボレーション
・今までの作品とは少し異なりSF要素がある
・前半と後半で時系列が異なるため読みやすい
バス停で起きる不思議な体験やカヤとチカのやり取りなど、読んでいて甘酸っぱい気持ちになると同時にSF要素が合わさって、想像力が掻き立てられました。
また、今まで最低な考え方をしていたカヤがチカの影響でほんの少しだけ変わっていくところや、チカが必死にカヤの世界のことを理解しようとするところは真っ直ぐで若いっていいなとも思いました。
後半部分はカヤが大人になってからの物語ですが、こちらは逆に前半部分と違っていい意味で読み応えがありました。カヤに対しては少し違うなあと否定的に思う箇所もありました。
こんな時・こんな人におすすめ
・青春時代の恋が忘れられない人
・小説×音楽を味わってみたい人
・自分自身の人生に迷っている時
『か「」く「」し「」ご「」と』(2017年)
あらすじ
ある高校のクラスメイト5人の話。人には少なからず、誰にも言えない「隠し事」があるがこの5人もそれぞれ、それを抱えていた。それはちょっと特別なちからで他人の感情が頭の上になんらかの記号として見える能力。仲の良いクラスメイトたちが抱く、お互いに対するもどかしくも繊細な想い。そんな5人を描いた、青春小説。
おすすめポイント
・2020年11月時点で累計発行部数50万部突破
・2018年以降多くの出版社より漫画化
・登場人物5人それぞれの視点で描かれる出来事が面白い
作品の順番で言うと4作目の作品です。個人的にはこの『か「」く「」し「」ご「」と』が一番好きかもしれないです。
メインのキャラクターは男の子はちょっと引っ込み思案で大人しい性格、女の子は天真爛漫で感情表現が豊かなタイプですが、その他の3人のキャラクターもそれぞれ魅力があって、1つの物語ごとに味が出ています。
また、ちからや能力というとSF系の要素をイメージするかもしれませんが、それも簡単で解釈しやすい内容になっていて物語にすんなりと溶け込んでいます。
ひょっとしたら、青春時代の繊細な感情を持っている学生たちにはこのような目に見えないような力があるのかもしれませんね。
こんな時・こんな人におすすめ
・青春小説は好きだが、ちょっと変わったタイプの小説を探している人
・少し元気がなかったり、落ち込んでいたりして明るい気分になりたい時
・学生時代の友人やクラスメイトを懐かしく思う時
『また、同じ夢を見ていた』(2016年)
あらすじ
小学校に友達が1人もいない少女、小柳奈ノ花は自分の同級生たちのことを皆馬鹿だと思っている。彼女の口癖は「人生とは〇〇のようなもの」で常に自分自身の人生や幸せとは何かを考えている。学校に友達のいない彼女の友達は主に2人。猫を助けてくれた「アバズレさん」と家のドアをノックして知り合った「おばあちゃん」。ある日、彼女は放課後にとある廃墟の屋上で手首にリストカットのある少女と出会う。奈ノ花はその女性のことを「南さん」と呼び、その日からもう一人友達が増える。彼女たちの「幸せ」はどこにあるのか、やり直したいこととは何か。住野よるによる自身2作目の心が少し楽になる青春小説。
おすすめポイント
・2018年時点で累計発行部数80万突破
・4人の女性の描く「過去と今と未来」
・日常感がありながらも独特な世界観がある少し不思議な作品
2作目ということで、同じような恋愛系の物語かと思いきや、読んでみると「人生」や「幸せ」についての内容で自分自身も考えさせられました。
タイトルにもなっているような夢と関係については、作中に出てくる3人の女性と主人公である奈ノ花とのやり取りや会話で徐々に明らかになっていくのが面白かったです。
また、著者独特の繊細な感情表現であったり描写が、この作品にもうまくマッチしていて心が温まりました。
こんな時・こんな人におすすめ
・恋愛系の小説ではなく他のジャンルを読んでみたい人
・今、何かに悩んでいたり後悔していたりする時
・小学校や中学校などの読書感想文の題材に迷っている人
『恋とそれとあと全部』(2023年)
あらすじ
めえめえ(瀬戸洋平)は下宿仲間でクラスメイトのちょっと変わった女の子サブレ(鳩代司)に片思いをしている。告白はまだしていないし、夏休みのためしばらく会えないと思っていた。そんな時、ふとした偶然で彼女から夏休み中に遠方のおじいちゃんの家に行くつもりだと聞く。その理由はある「不謹慎な」目的のためで思いがけず彼女に誘われた、めえめえは二つ返事で行くと言ってしまう。夏休みの4日間で二人は夜行バスに乗りおじいちゃんの家を目指す。2人がおじいちゃんの家に行く理由とは何か、まためえめえの片思いの行方はどうなるのか。2人の特別な旅が始まる。
おすすめポイント
・青春小説×夏休みの旅の組み合わせが非日常感がある。
・「生」と「死」そして「恋」と「友情」を高校生たちが深く考える作品。
・登場人物がそれぞれ個性豊かで面白い。
住野よる作品の中では10作目となる小説で最新作です。読み終わった感想としましては、色々複雑で考えさせられることが多かったですがとても清々しい気分になりました。
片思い中の相手と2人で夜行バスや電車に乗る体験は私自身高校生の時はしたことがなかったので羨ましいと思いましたし、学校の延長線上のようでそうではない関係性がすごく輝いて思えました。
また作品の内容はもちろんのこと、めえめえとサブレ以外の登場人物の性格やエピソード1つ1つも面白いものがあって個性っていいなと思うと同時に大事にしていきたいとも感じました。
こんな時・こんな人におすすめ
・好きな相手に片思い中の人
・今までと少し異なる青春恋愛小説を読んでみたくなった時
・他人と違うと普通じゃないと言われて気分が落ち込んでいる時
住野よるのおすすめ小説を読んでみよう
いかがでしたか。住野よるさんの作品の多くは主人公や登場人物たちが学生であるため、学生の方はもちろん大人の方にも読みやすく比較的人気です。
今回紹介した作品はもちろん、他にも人気の作品はあるのでぜひ読んでみてください。
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